月刊・教室だより

名物先生によるリレー連載(毎月20日更新)

【連載第213回】

マガリャンイスって誰のこと?

 数年に一度、世界史の教科書の見直しがあり、新しい発見に加え、新たな語句の補充や削除、地域・時代ごとの記述の分量の見直し(最近は西洋史・中国史が削られ、東南アジア・イスラムなどの記述が増える傾向です)や間違いの修正などが行われるのですが、私が気になっているのが、人名・地域名の訂正です。

 新大陸に到達したコロンブスはコロン、奴隷解放宣言のリンカーンはリンカン、キリスト教を日本に伝えたザビエルはシャビエル、など実際の発音に近い表記に修正した教科書が多くなっています。ちなみにくだんのマガリャンイスは初の世界周航を果たしたマゼラン。マガリャンイスって・・おどれ、いったい誰じゃい!?

 相手国の文化を尊重する姿勢はわかりますが、これはあきらかに行き過ぎ。すでに定着した固有名詞を無理やりオリジナルに戻してしまうと、かえって歴史を実際の生活体験の中で実感する機会が失われてしまいます。ボヘミア(今のチェコ)を「ベーメン」と表記するようになった時から違和感を強烈に感じていたことです。自由な生き方を愛する「ボヘミアン」美しい「ボヘミアグラス」そしてクイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディー」!これらの名辞と歴史知識が切り離されてしまうことになるのはあまりにも惜しいではないですか!

 かつての「グルジア」が「ジョージア」に変わったように相手国の要請があるならまだしも、今更、オランダをネーデルランドと呼んでも百害あって一利なしです。ちなみにオランダは最有力だったホラント州を国名と誤ったもの。「きみ、どこから来たの?」「東京」と答えたら「東京国」から来たと思われたってことですね。

 我々日本も「Japan」として世界に認知されていますが、別になんの問題もなし。なぜ「日本」が「Japan」になったかについては諸説ありますが、最有力なのは「日本」を中国人はもちろん音読みで読むので「ジッポン」。これが一部なまってアルファベット表記されたものがマルコ・ポーロの著書で有名な「Jipangジパン(グ)」ピンポンがpingpongと表記されたのと同じ理屈です。そして再度なまってめでたく「Japan」の出来上がり!

 そういえば一昨年、G20サミットで議長国を務めるインド政府が突如、国名を「バーラト(BHARAT)」と自称した名札を置き、周囲を騒然とさせましたが、全世界が完全に無視。相変わらず「INDIA」として扱われています。(笑)
 どうか我々の国も「NIPPON」と書かれた名札を掲げませんように。

宮地先生