教室だより128

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第128回】

ねえ、ムーミン?

 今年2018年の大学入試センター試験が終わりました。英語は全体的にはまあやりやすかったようですが、昨年に続いて大問5が、ちょっと気付きが必要なひねった物語文でした。本番で解いているときに、「にやっ」とできたら理解できたことになるというタイプの問題です。この傾向は今後も続くかもしれません。一方、国語は高得点が取りにくい問題だったようで、平均点もかなり低めになりそうです。
 また、話題になったのは、地理Bの「ムーミン」問題。北欧のスウェーデン、ノルウェー、フィンランドを比較する文脈で、「ムーミン」、「小さなバイキングビッケ」、「ニルスのふしぎな冒険」が取り上げられています。地理でこんな知識が必要なの?と思った方もいらっしゃるでしょう。私はすぐにそれぞれのアニメ作品を懐かしく思い出しました。「ビッケ」の主題歌、「♪イギリス、オランダ、ブルガリア~」って、ブルガリアはノルウェーから遠すぎないか?という疑問を感じたものでした。
 思えば、「ハイジ」も「小公女」も、「あらいぐまラスカル」も「フランダースの犬」も、私の世代はテレビアニメで知り、世の中の知識の一部になっています。「フランダースの犬」の最後では、ルーベンスという画家の名前を初めて聞きました。「一休さん」や、「マンガ日本昔話」で知ったこともたくさんあります。「♪坊やよい子だねんねしな、今も昔も変わりなく~」。貧乏神と聞いてあまり悪そうに感じないのは、あのアニメのおかげです。
 つい「ムーミン知らないの?」と目くじらを立てたくなりましたが、そういうわけで、自分のこの種の知識の多くが幼少期の出会いによるのです。偉そうなことは言えません。それぞれの世代に、そういうものがあるはず。面白いと思って触れたものは、自分の中に残っていくということですね。
 センター試験に限らず、大学入試問題に向き合うときには、あなたがこれまで小さい時から出会ってきた様々なものを総動員することになります。最終的には、表面的な知識に劣らず、そういう底力のようなものが支えになると私は思っています。

高橋先生