教室だより141

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第141回】

国語は楽しく勉強しよう!

 数年前に、私の小5クラスの国語の授業を無料体験された方がいらっしゃいました。大手の進学塾に通わせているのだが、国語が苦手でまったくできるようにならない、とのこと。
 授業ではまずは元気に音読、それからテキストの問題を解き始めるのですが、クラスの生徒たちは、「これ簡単、すぐわかる!」とか「先生、これこっちでいいの?」とか「あ、ここに書いてある、みっけ!」とか「やっぱりこっちだよね~」「わたしもそれ」とか言いながらわいわいがやがや解いています。体験中のその子は、それまでに相当多くの問題を解かされてきたにもかかわらず、一人まごまごしている様子。私はその子のそばについて、ヒントを出しながら解き進めてもらいましたが、ほかの生徒はもう解き終わっていて少し退屈そう。その子がだいたい最後まで問題を解いた段階で、いつものように自分の子ども時代のちょっと本文から脱線気味のエピドード話を交えながら答え合わせをしました。
 その様子を生徒のお母さんは1時間ずっと見学されていたのですが、驚いたのは授業後。「なんなんですか、あの授業は! 生徒はうるさいし、先生もくだらない話をして!」とおかんむりのご様子。結局入塾はされなかったのですが、私はとても悲しい気持ちになりました。
 おそらくそのお母さんは、国語の授業を、「それでは、この問題を20分で解いてください。それでは始め!」という号令の下に、シーンと静まり返った中で生徒が無言で黙々と解き、どこに答えが隠されていたかを鋭く解説する、というイメージを持っていたと思うのですが、それでは小学生は国語がまったくできるようにならないのです。

 早稲田学習教室の実力養成クラス(非受験型)は週1回60分の授業で、宿題も漢字と読解問題見開き2ページ分の宿題しか出しません。「もっと宿題を出してください」と言われることも多いのですが、国語に関してはこれで十分なのです。
 初めから厳しい時間制限を課したり、大量の宿題を出したりすると子どもにとっては文章は「読むもの」ではなく、「一刻も早く解くべきノルマ」になってしまいます。問題があることなんか忘れて文章を読むこと、そしてその文章から自分の心の世界が広がっていくことを経験するのが、小学生にとっては一番大切なことなのです。
 子ども同士でわいわい話すのは共通感覚を身につけるうえでも大切なことで、自分が考えもしなかったことを同級生が自分自身の言葉で話すのを聞くことは心の成長を促します。一見「くだらない話」も文章から自分の周りの様々なことに思いをはせることを無意識のうちに感じさせることができます。
 私だけではなく、高橋先生・小杉先生も同様の授業を展開していて、いつも小学生クラスの授業は笑いが絶えません。それでも子どもたちはどんどん国語が得意になっていきますよ。

宮地先生