教室だより147

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第147回】

ヒロシマを世界に

 広島平和記念資料館の展示がリニューアルされたと聞いて、4年ぶりに広島に行ってきました。訪れた日の最高気温は36℃。東京よりも一段と激しい猛暑の中、入館待ちの行列に並ぶこと約1時間。やっと冷房の効いた館内に入ることができました。しかし館内に入った後も満員の訪問者で、列はなかなか進みません。みなが展示に見入っているのです。

 私は故郷が広島県なので、子供の時から何度か資料館を訪れています。小学校の時に社会科見学で初めて訪れた時には、あまりにもむごたらしいジオラマ人形の姿にショックを受けたのを覚えています。
 今回、かつての原爆資料館のシンボルであったそのジオラマが撤去されることになったと聞いて残念に思っていたのですが、実際に資料館を訪れてみると違った感想を持ちました。あのジオラマ人形は確かにものすごいインパクトだったのですが、完全に人間を「思考停止」状態にしてしまい、その他の展示が伝えたいメッセージがまったく頭にはいってこないのです。我々も社会科見学の後は「気持ち悪かった」「怖かった」という感想を口にするだけで、あのジオラマの印象しか残っていませんでした。

 今回の展示リニューアルは被爆者の遺品・被爆者本人の描いた絵が数多く展示されていました。被爆者の遺品にまつわるエピソードが丁寧に説明されており、一人一人の被爆者の生きざま・そして死にざまを克明に伝えようとしています。そして生き残った被爆者のその後の苦難に満ちた人生や遺族の癒されることのない悲しみもしっかりと伝わる内容でした。家族連れの来館者も多く、お爺さん・お婆さんが孫たちに一生懸命話をしています。

 来館者の半数近くは外国人、特に白人の方で、英語で書かれた展示内容を真剣に読んでいました。来年はオリンピックの年で過去最高の訪日者数になるのは間違いないでしょう。多くの人が「ヒロシマ」にも訪れると思います。今回の素晴らしいリニューアルによって世界の多くの人々に「ヒロシマ」そして「ナガサキ」のメッセージが伝わることを願っています。

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宮地先生