教室だより162

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第162回】

Go To で広島

 10月の最後の週末に広島へ行ってきました。6時頃の新幹線のぞみで広島駅についたのはお昼前でした。あまり下調べをしていなかったのでとりあえず原爆記念館に向かうことにしました。交通案内所で路面電車の8番に乗れと言われたので次の電車に乗り込みました。東京の荒川線と違って3両連結で広い道路の真ん中を走っていて室内もゆったりして快適でした。
 停留所を出てすぐ原爆ドームが目に入りました。劣化が激しいので樹脂を使って大規模な修復を行っていました。原爆の破壊力の大きさにたじろぐばかりでした。川沿いを歩いていくと毎年式典が行われる公園です。そのはるか先修学旅行の一段が目指していたのが原爆記念館でした。
 中に入っていくと原爆投下以前の幸せな日常の写真が展示されています。8メートル四方の広島の鳥瞰図模型があり、機械仕掛けで原爆が投下され同心円状に波動が伝わった後には廃墟と化していました。続く展示は個人や家族にまつわる悲惨な状況が続いています。小中学生の見学者が多かったのですがあまりの悲惨さに声も出ない状況でした。死んでいたほうがましという言葉が心に刺さり思わず涙と鼻水が止まらなくなりました。
 ここで初めて知ったことは、アメリカは原爆投下の前にパンプキンという模擬爆弾を日本各地で投下して性能のテストを何回も行っていたということです。実験対象の1つとしか考えていなかったのですね。
 記念公園から高速船で宮島に向かいました。いくつもの湾を通り過ぎ様々な船が行き交っていました。船着場から厳島神社までは徒歩で20分程かかります。海に突き出した回廊のすぐ下には海水が流れ込んでいました。大鳥居は残念ながら修復中で鉄骨で覆われていました。鹿が人間に馴染んでいてスナック菓子を見せるとこちらに近寄ってきました。名物の焼き牡蠣や穴子の竹輪を口にしながら船着場へ戻りました。
 宿は海に面したホテルの11階で未明に目を覚まして空をガラス越しに見ると東京では見たことがないくらいの星々が煌めいていました、以前萩原先生に紹介されたアプリの星座早見を使って星の名前を見つけました。オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンがつくる冬の大三角がひときわ輝いていました。
 翌日は呉まで足を伸ばし戦艦大和博物館を訪れました。ここには25メートルほどある戦艦大和の模型が陳列されています。隣接する海上自衛隊の潜水艦を展示した博物館はコロナ禍で入場制限していたので外から巨大な潜水艦を眺めるだけでした。
 広島は中心部が廃虚と化したので歴史的建造物が京都とかに比べると少ない気がします。広々として整然とした町並みはいいのですが。
 母親と妹が企画してくれた一泊二日の弾丸ツアーでしたが天気に恵まれ満喫できました。

藤田先生