教室だより163

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第163回】

ショート・ショート

 中学校1年生の頃、私のクラスでは短編小説を読むことがとても流行っていました。火付け役は、星新一。短編小説よりもさらに短い「ショート・ショート」というジャンルを得意とした作家です。最近の教科書の中にはショート・ショートの書き方が説明してあるものもあるので、ご存じの方も多いと思います。読書とは無縁の友達が、わずかな休み時間に読むほどですから、人気の高さがうかがえます。ストーリーが完結するのに長くて20ページ、短ければ3ページで終わることもあります。これなら10分の休み時間でも十分読み終わります。「妄想銀行」・「ボッコちゃん」・「未来イソップ」あたりが人気で、私は「妖精配給会社」を読んでいました。一冊の本の中に30~50のお話が収録されています。不思議系・SF系の話がほとんどで、エヌ氏なる人物が不思議な体験をし、最後にアッと驚く展開が待っているのがパターンです。テレビドラマの「世にも奇妙な物語」といえばわかりやすいかもしれません。実際に星新一の作品もいくつかこの番組でドラマ化されています。
 その後、短編を得意とする他の作家の作品を読み始める友達も出てきました。イギリスのサキ、アメリカのオー・ヘンリー、日本の芥川龍之介。私はウェルズのSF短編集にはまっていました。また、授業の中にもショート・ショートは普通に登場してきます。高校の現国で芥川龍之介の「羅生門」、英語の教科書にはオー・ヘンリーの「賢者の贈り物」・「20年後」が「The Gift Of Magi」・「After Twenty Years」という原題で登場しました。早稲田学習教室でも小6国語のテキストに芥川の「杜子春」が載っていますね。クライマックスシーンのごく一部分しか載っていないので、是非とも全編を読んでほしいと思います。
 全く本を読まない。読んでもいつも途中で挫折してしまう。そんな人には短編小説がおすすめです。気軽に何も考えずに読むことができ、なおかつ面白い、教科書にも出てきて、ドラマ化もされる、ショート・ショート始めてみませんか。

小杉先生