教室だより164

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第164回】

初めての大学入学共通テスト

 現在第3波が猛威を振るっている新型コロナウイルス。ちょうど去年の今頃からその報道が目につき始め、その後、私たちを翻弄し続けた1年となりました。
 そしてつい数日前に初めての大学入学共通テストが終わりました。英語で民間の検定を使うという案がくつがえり、記述式を導入と言っていたのが結局マークシート方式のままになるなど、受験生を振り回してきたこの新テストが、よりによってこのコロナ禍の下で来るとは、何というめぐりあわせでしょう。渦中の受験生には慰めにならないかもしれませんが、将来本当に語り草になる受験だったと思います。「俺たちコロナ受験学年だからさ、怖いものはないよ」「検温表つけさせられたんだよ、適当に埋めたけどね笑」「マスクのつけ方を注意されて、直さなかったら失格になった人がいたんだよ!」といった具合に。
 では、英語に関して、具体的に見てみましょう。「英語」「リスニング」ともに予想通り分量が多く、苦労した生徒も多かったようです。もともと、speakingとwritingを別の試験で見る想定だったので、予想されていたとはいえ、似たような作業を繰り返しさせられるような気分になる構成でした。だから、洗練された速読を身につけていない場合、集中力を切らさず高得点を取るには、相当の馬力が必要だったと思われます。題材は、外国から来た生徒たちをもてなす方法や、校則の変更についての意見交換など、想定内のものが多く、面食らうような珍奇な内容はありませんでした。一部、牛を飼う話は少し珍しい内容でしたが。(来年度以降の受験生が、過去問として解く時のために、ネタバレは最小限にとどめておきましょう。)
 単語、構文の難易度は、予想通りセンター試験とさほど変わらず、特別癖のある読みにくい部分はありません。従来通り、多読、速読の標準的な問題群として活用できそうです。1つの問題で複数の正解を選ぶ問題では、正解の個数が分からない作問も予想されていましたが、本番では、正しいものを2つ選べ、2つとも当てれば順不同得点という、やりやすい出題でした。factとopinionを区別して選択肢を選ぶものもありました。その観点を日頃から意識して読んでいなかった受験生はミスを誘われたかも知れません。
 COVID-19は未だに収束の兆しが見えず、不確定要素がたくさんある状態で受験計画を組み立て、挑もうとしている今年の受験生は、本当に大変だと思います。今回の結果はどうあれ、あと少し、集中して目標に向かって強い気持ちで取り組んでいってください。あなたたちは、数十年に一度のすごい経験をしているのです。ちょっと誇りに思っていいですよ。

高橋先生