教室だより172

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第172回】

自分で考えないと・・・

 最近教えていて、ますます子供が自分で考えることがなくなってきているように感じます。こういう話をするのは、何も入試で思考力が試されるようになってきているからというわけでもありません。これからの時代は、本当に自分で調べて自分で考えていかないと、ますます生きるのが難しくなると思っているからです。
 かく言う私もかなり単細胞で、「そう言っているんだからそうなんだろう」と単純に信じやすい方でして、政治家、活動家、マスコミ、検察、医者、学者など、世論をつくる側の述べていることを、自分では考えているつもりでも、相当鵜呑みにしているところがあったな、と今では反省しています。私自身の悪い癖で、人が何か主張するときにはその背後で感情、利害、権力欲などが働くことがあるということに、あまり注意が向かないところがあるせいだったかな、と思っています。
 ここでは具体的に事例、人名、団体名はあえて挙げませんし、もちろんどんな分野でも真摯に取り組んでおられるたくさんの方々がいらっしゃることは、念のため強調しておきます。
 しかしながら、たとえば政治家がさまざまな利害で動いていることは、広く知られていることですし、国際政治を勉強すると、そこにはさまざまな裏があることが分かります。また、一見正義の立場で活動している人たちの背後にも、いろいろな思想をもった勢力が控えていることがあります。歴史的な定説も鵜呑みにはできません。いわゆる陰謀めいたことも実際たくさんあります。こういうことを口にすると、すぐに陰謀論だと片づけられてしまう傾向がありますが、「悪魔などいない。そういうことを口にする奴は馬鹿だ」と言うことが、悪魔にとって一番好都合であることも、考えてみる必要があります。
 マスコミも、もちろん商売で動いているところがあり、社是があって、特定の事柄を煽ったり、あえて取り上げなかったりは、日常茶飯事です。戦前と戦後で正反対の主張を続けている新聞があることも、よく知られていると思います。また、文系人間の悪いところかもしれませんが、エヴィデンスよりもエピソードに依りかかった報道をしていることも事実です。
 私も昔は信じていましたが、検察も、政治的な思惑から、冤罪をでっち上げたり、国策捜査を行なっていることも、だいぶ明らかになってきていると思います。
 医者は、人間の生命をあずかる職業なので、是非エヴィデンスに基づいて最良の治療に当たっていただきたいところですが、実態は、大学付属病院は製薬会社からの莫大な寄付金に頼って運営されており、教授陣も製薬会社に忖度せざるを得ません。そこで洗脳された医者たちが市中病院や自らのクリニックに散っていき、そこでもMRという製薬会社の営業担当者から新薬情報や論文のコピーをもらい、専門医の資格をとるにも製薬会社の息のかかった有名医師の講義を受けなければなりません。かといって海外の論文に目を通すのも骨が折れますし、よしんば読んだとしても、その論文も製薬学者から指示を受けたゴーストライターが書いていて、特に忙しい方々が目を通す要約部分は、さらに別のゴーストライターが製薬会社にとって都合の良いところだけを強調してまとめている事実があります。そもそも新薬の治験にも、製薬会社から資金が出ています。 真摯に治療に当たるのもなかなか大変です。
 学者は少なくとも真理を追究したいという一点は譲らないものだとばかり思っていましたが、気候変動にしろパンデミックにしろ、タイムスパンを短くとったり、計算の仕方を変えて、絶対リスクと相対リスクをすり替えたり、さまざまな恣意的操作を行なっています。また、まさかと思われるかもしれませんが、考古学でも、自分の学説に都合の悪い遺物などが出てくると、発掘現場を囲い込んで部外者を入れないようにしたり、遺物を別のものとすり替えたり、年代測定のデータが載っている厳重に博物館などで管理されている台帳の数字を書き換えたり、そのページだけ行方不明になったりということが起こっています。こうしたことは残念ながら、権威とされている人ほど行なう傾向があります。これでは暴くにはあたかも犯罪捜査のような手法まで必要となります。もちろん異を唱える者は、研究費を得られなくなったり、名誉を傷つけられたり、左遷されたり、学会から抹殺されたりします。真理を貫くにも、いろいろな覚悟が必要です。
 皆さんは私ほど馬鹿ではないとは思いますが、くれぐれも世の中で言われているいろいろなことを鵜呑みにせずに、自分で考えて自分で確かめて、せめて本当のことを言っている人を見抜く目を養って、そういう方々を擁護し、危険を回避し、しっかり自分の足で立って生きていってほしいと願っています。

塾長先生