教室だより173
専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)
【連載第173回】
真鍋氏とノーベル賞
ノーベル物理学賞に真鍋淑朗氏が受賞されたので内容を簡単に紹介します。
真鍋氏は早くから二酸化炭素等の温室効果ガスに着目し、地球温暖化の予測に関する長年の研究業績が高く評価されました。受賞理由は
"for the physical modelling of Earth's climate, quantifying variability
and reliably predicting global warming."(地球気候の物理的モデル化、気候変動の定量化、地球温暖化の確実な予測)というものです。
真鍋氏は1964年、気温の鉛直構造は放射と対流で決定されるという「放射対流平衡モデル」を発表しました。これは地球上の気候は太陽からの放射と大気の中の熱の対流によって決定されるというものです。
また1967年に発表した論文で二酸化炭素と温度の関係を数値化しました。この研究こそ小学校、中学校の理科の教科書に載っている地球温暖化温暖化のメカニズムなのです。世界的に対策が叫ばれている地球温暖化の理論は50年以上前に遡るのでした。
真鍋氏は大気の主要な成分である窒素や酸素の割合を増やしてもさほど変化はないが、二酸化炭素の割合が2倍になると地球の平均気温が2.3度上昇することを突き止めたのです。
真鍋氏は愛媛県の医者の息子で、医学部に進学したものの、物理の道へ転身しました。その後は当時コンピューターが急発展していたアメリカへ渡り研究をしました。
1960年代当時のコンピューターは性能が十分ではなく、シミュレーションを行うのが難しかったのですが、眞鍋氏の「大気モデル」では大気などの動きを単純化することで、具体的には大気を地上から上空までの1本の柱と考えるモデルを使ってシミュレーションを行うことで、当時の限られた計算能力の制約の中でも地球の大気を十分に再現できるモデルを作りました。
おなじみの天気の長期予報、台風予報なども真鍋氏の功績だといわれています。
このところ青色発光ダイオードの赤崎勇氏、リチウムイオン電池吉野彰氏など私たちに身近なものでノーベル賞を受賞される方が印象に残ります。真鍋氏の功績は後年になってより大きなものになることでしょう。
藤田先生 |