教室だより187

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第187回】

棒たおし

 劇的な勝利と番狂わせがたくさん起きたカタールW杯。攻撃的なチーム、守備的なチーム、フィジカルに優れたチーム、組織力に優れたチーム。各国それぞれの戦い方があり、文化や国民性が反映されているのがとても面白かったです。特に今回の日本代表の戦術変更による大勝利を目の当たりにして、私は体育祭のある競技を思い出しました。
 私の中学校の体育祭にはレギュラー種目として「棒たおし」がありました。クラス対抗全員参加の集団競技です。高さ5mの太い丸太を両陣営の特定の場所に立て、てっぺんに旗を取り付けます。スタートの合図とともに相手陣営の棒の旗を先に奪い取ったほうが勝利。細かいルールは全くなく、行き過ぎたラフプレー以外禁止事項はなかったと思います。実際かなり荒い競技で、けがをしたり、服が破れたりすることもありました。
 一般的な戦い方は、相手の棒を倒し旗を奪う攻撃陣と自陣の棒を死守する守備陣にクラスのメンバーを分けることから始まります。さらに、守備陣は棒を支えるグループと襲いかかってくる敵を棒に近づけないブロック役のグループに分かれます。一方、攻撃陣は敵のブロックに突進して棒への経路を確保するグループと棒にのぼり棒を傾け旗を奪うグループに分かれます。人数の割り振りは自由なので攻撃に人数を割くチーム、守備を固めるチームなど特徴が出てきます。
 何よりも大事なことは、適材適所です。体の大きいどっしりしたタイプは棒を支える大黒柱。小柄だがすばしっこいタイプは棒をのぼる役。私の中学校では前者は柔道部、後者はサッカー部が定番でした。ゆえに、「相手チームで棒をのぼるのはA君だ。」とある程度予想ができます。すると「A君を棒に近づけないようにマークをつけよう。」という対抗策が生まれます。相手もそうはさせじとA君が捕まらないようにスクラムを組んで突っ込んでくる。あるいは、裏をかいてB君に棒をのぼらせる。このように、とても戦略的な競技でした。
 けがや事故も多いため、残念ながら実施する学校は年々減少している模様です。大きな丸太が倒れてくる時が一番危険なので、ビーチフラッグのように地面に直接旗を立てる、特定の人に旗を持たせるなどの工夫が必要だと思います。騎馬戦とともに是非とも生き残ってほしい競技です。

小杉先生