月刊・教室だより

名物先生によるリレー連載(毎月20日更新)

【連載第197回】

猫舌やもろもろのこと

 羹に懲りてなますを吹くー(あつものにこりてなますをふく)これは、私にぴったりの言い回しです。熱い食べ物を口にしてやけどをしたので冷たいものにも息を吹きかけて冷まそうとする例えです。私は昔から猫舌です。熱い飲み物や食べ物が苦手なのです。コーヒーやラーメンが運ばれてきてもすぐには口にできません。ふうふう息を吹きかけて無理に冷ますか時間をかけて温度が自然に下がるのを待ちます。時々待ちすぎてぬるくなってしまうこともたびたびです。自宅ではコーヒーやラーメンの後ろにサーキュレーターをおいて強制的に冷やしています。寒いときはメガネが白くなってしまうので二重に困ります。
 猫舌つながりですが猫手(ねこで?)でもあります。自宅で使用するどんぶりは二重構造のステンレス製です。通常の容器ですと、例えばカップ麺の薄手のものですと手では持っていられなくなり、タオルや敷物を下に敷いて持たざるを得ません。化学実験中に熱濃硫酸が入ったビーカーを受け取ろうとしたときに軍手をしていたのですが熱さが先に立って怖さのあまり手を放して実験を台無しにしたことを思い出します。少年時代は指先の皮膚が弱くプールに長く入っていた時のようにしわしわになりしまいには皮がむけてしまいました。
 猫舌に戻りますと舌先を引っ込めると暑さを感じなくなるとの情報を知り試してみようと思ったのですが、無理に飲もうとして喉が灼けそうになり、無理はしないようにしています。体質だからとあきらめ気味です。
 何十年も生きていると、若い時からいろんな症状に悩まされてきたと思います。学校の持久走では走り出しは好調かなと思っていても必ず片腹が起こり、途中で右か左かのおなかが痛くなり、歩くぐらいのスピードで残りの道のりを進むしかありませんでした。4㎞走が中学で毎年行われるのですが、いつも最後尾で自転車に乗った伴走の教師に頑張れと言われていました。腹痛が起きる確率は九割以上ありました。持久走に熱心な学校だったので大変苦労していました。
 小児喘息にも悩まされていました。商品名スピンヘラーというL字型のプッシュ式薬剤がないと呼吸が細く苦しくなってしまいました。現在はそれらの症状は改善し穏やかな日々を送っています。前触れもなく膝や足の母指球あたりが痛くなったりしますが時間とともに消えていきます。急な成果を求めず気長に体と付き合っていくしかありません。
 昔は何で自分だけ不幸が起きるのか一人で悩んでいました。五体満足そうな学友たちをうらやんでいました。しかし年月とともにそれらの病気は改善しほとんど意識することがなくなってきました。悩み事を抱えて一生悩むより忘れるぐらいに精一杯生きていくことが大事だと思います。
しかし私の猫舌はまだ続いていることを再認識しているこの頃です。

藤田先生