月刊・教室だより
名物先生によるリレー連載(毎月20日更新)
【連載第199回】
難民キャンプ
先日、高校3年生の英語の教科書に「難民キャンプ」のお話が出てきました。2人の難民のエピソードが紹介されていました。
1人はソマリア出身の8歳のマハムード君。干ばつと暴力によって国を追われ、2013年エチオピアのブラミノ難民キャンプにやってきます。そこで初めて教育に出会います。今まで母国ソマリアでは教育を受ける機会さえありませんでした。教育を受けたことによりマハムード君は将来ソマリアの大統領になる夢を持ちます。そして、無料の学校・病院を開く決意をするのです。
もう1人はシリア出身のアブ・マフムードさん。2012年に国を追われ、ヨルダンのザータリ難民キャンプにたどり着きます。難民キャンプにもかかわらず、そこでは多くのビジネスが営まれていました。シャンゼリゼ通りと名付けられた活気に満ちた商店街さえあります。彼はキャンプにピザ屋がないことに気付き、ピザのデリバリーを始めます。そして、シリアに戻ったら、ピザ屋を開く決意をします。「難民起業家」一見矛盾しているようなこの言葉にこそ大切な意味が隠されているのです。
この2つのエピソードからわかることは、難民キャンプのイメージを我々はアップデートしなければならないということです。もはや、衛生状態の悪いテントの集まりだけではないのです。いったん難民になるとなかなか故郷に戻ることがかないません。多くの難民は約20年近くキャンプで暮らすことになるのです。当初は、水・食料・簡易住居・医療などが緊急に必要です。しかしその後は、電気・教育・キャンプを去る時に向けての職業訓練などが必要となるのです。支援する側も彼らの明るい未来に向けた支援を考えなければならないのです。
高校生の英語の教科書には、本当に多くの種類があっていつも驚かされます。今回使用されていたのは「SDGs英語長文」というテキスト。SDGsに即した英文が掲載されています。難民キャンプ以外にも「マイクロプラスチック」・「水資源の危機」・「バーチャルウォーター(仮想水)」・「パームオイル」・「ジェンダーの平等」・「自然災害」など興味深いテーマが盛りだくさんでした。生徒と一緒にテストに向けて1年間読み込んできましたが、こちらも大変多くのことを学ばせてもらいました。英語の難易度のバランスも良く、素晴らしい教材だと思いました。
小杉先生 |