教室だより2

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第2回】

壊れかけのレディオ

 私は毎年この時期になると、新中学1年生英語のクラスで、NHKラジオの「基礎英語1」を紹介しています。しかし年々ラジオという存在が子どもたちにとって遠いものになっています。英語の例文では「listen to the radio」はいまだに定番ですが、子どもが「りっすんとぅーだラジオ」って言って、私が「ラジオじゃなくて、ほら、徳永英明の『壊れかけの・・・』?」と突っ込むパターンも、このごろいまひとつ反応がありません。確かに古い曲ですが、この前の紅白で、徳永英明がこの名曲を感動的に歌い上げてましたよね。

 CDプレーヤーはあっても、ラジオは、「聞いたことがない」、「家にあるか分からない」という子どもたちが増えています。だから、AM,FMの区別やチューニングがすごく新鮮みたいで、チューニングのつまみを回すのをやらせてあげると、子どもたちは目を輝かせます。そうですよね、こんなにお手軽にいろんな声や音楽が聞こえてくるなんて、わくわくするはずです。

 学校でも、先生によっては積極的にNHKのラジオ講座を取り入れている方もいるようですが、このところ多数派ではないようです(ああ、そういえば昔、“ラ講”っていうのもありました、ブラームスのタタタタタターターっていうテーマ曲!)。今は他にいろいろ便利なツールがありますし、教室にALTの方も来てくれますから。

 確かにラジオは絶滅しつつあるメディアでしょう。でも、朝、早起きをした子どもが、子どもにふさわしい安価で手軽なラジオに向かい、自分からスイッチを入れ、眠い目をこすりながら、もごもごつぶやいている図は、何かしら根本的に大切なものを含んでいる気がするのです。能動的に、遠いものに耳をすます。勉強ってそういうものじゃないでしょうか。

高橋先生