教室だより8

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第8回】

「壮語」理解を進めよう

 「あいつ、あんな大口たたいて、全然たいしたことないじゃん」他人にそう言われるのって致命的ですか? 周りの誰かが大言壮語だったら、その人がいないところで、思いっきり馬鹿にしますか?

 教室で大きなことを言って、後で「いやあ、失敗、失敗」と頭をかく生徒が少なくなっているように思います。「100点取ってくる!」「今度の陸上大会で優勝するから、見に来てよ」「学校でいちばん人気の娘(こ)にアタックするから」「医学部に入ってみせるよ!」 私は、子どもたちがそういう大口をたたくのを聞くのが好きです。「よし、よく言った!」と喝采したくなります。でも多くの場合、特に子ども同士では「なに分不相応なことを言ってやがるんだ」となってしまうことが多いように思います。でも、分相応って何? 吹こうよ。吹けないのは不幸だよ。乙武さんもどこかで書いてましたよ、「失敗しよう」って。
 私が教えているのは、6人までの少人数クラスなのですが、それでも最近「吹く」生徒はあまりいません。自分のことについては、どこか遠慮がちに語り、本当にやりたいことをはっきり言わないのです。

 その点、以前教えていたある中学生は小気味よかったです。親御さんは国語を教えてもらいたかったのですが、その生徒は、自分の書いた小説を読んでほしいと言い出したのです。授業らしくない授業になりましたが、熱い思いで書いてくれた原稿を楽しく読ませてもらいました。少人数のクラスなので、そんなちょっとイレギュラーな付き合いもたまにあり、楽しく思っています。

 私が言いたいのは、いわゆる、「大きな夢を持ちましょう」ということではありません。「A大学を目指すと言っておけば、だめでもB大かC大には引っかかるだろう」といったよくある方便でもなく、「願望を言葉に出したら、それは実現する」という自己啓発のようなことが言いたいのでもありません。
 そうではなくて、「こうしたい!」という思いがまずあって、考えているうちにそれがどんどん膨らみ、誰かに言いたくなる。周りの人もそれを聞いて共感し、人ごとながらワクワクする。そういう仲間との関係って、いいものではないかと思うのです。
 大言壮語しあいましょう。そのほうが、人生を楽しく、ドラマチックに過ごせますから。

高橋先生