月刊・教室だより

名物先生によるリレー連載(毎月20日更新)

【連載第219回】

北海道で考えたこと

 連日の13時間に及ぶ過酷な夏期講習の前半戦が終了し、4泊5日の北海道旅行に出かけてきました。小樽駅に到着した初日は28℃と最近の東京では考えられない涼しさ。北海道に着いたことを実感しながら地元在住の大学時代の友人の姿を捜したのですが、なぜか見当たりません。(あれ、おかしいな)ともう一度当たりを見渡すと一人のおじいさんの姿がふと目に留まりました。(んんッ、まさか?)と目を凝らすとまさかの友人でした!十数年ぶりの再会だったのですが、いつのまにかすっかりじいさんに。再会を喜びながらも本当におどろきました。

 小樽市内を案内してもらいながら昔の思い出話に花を咲かせたのですが、不思議なことに30分ほど話しているうちにすっかり記憶の中の友人の顔に戻っていました。30分で30年若返った計算です。

 人ごみの中で私を待っていた顔は私の知らない小樽での友人の顔だったのですが、私と話しているうちに私と一緒にいたときの友人の顔に戻ったのです。ひょっとすると私の顔にも友人は同じ印象を持ったのかもしれません。人には誰かと話すときの顔というものがそれぞれあるんだなあ、と改めて感じました。

 よく事務の友野さんと話すのですが、「早稲田学習教室の生徒の顔」というものがあります。体験授業を受けている生徒の顔はすぐにわかります。緊張もあると思いますが、明らかに他の塾生と表情が違うのです。しかし不思議なことに塾に入って1カ月もするとまったく別人のような柔らかい顔になっています。「早稲田学習教室の生徒の顔」になっているのですね。

 自分の顔は自分では見ることができません。自分の顔は他人のためにあります。どんなに疲れていても、生徒たちの笑顔に心和むことが多い毎日ですが、はたして私の顔は生徒たちにどういう顔に見えているんだろう? 笑顔で生徒たちと向き合えているといいいなあ、と心から思います。

 

宮地先生