月刊・教室だより

名物先生によるリレー連載(毎月20日更新)

【連載第223回】

逆再生

 先日、小学生に「逆再生アプリ」なるものを紹介されました。しゃべった言葉を逆再生するシンプルなものです。「何かしゃべってみて」と言われたので、自分の名前を逆さ読みした「むさおぎすこ」と言いました。逆再生すると意味不明の言葉が返ってきました。そこで今度は「こすぎおさむ」と言って逆再生。「うまそいぐそ」と謎の言葉が東南アジア風の発音で返ってきました。物まねの要領で、「うまそいぐそ」と言って逆再生すると、あら不思議、「こすぎおさむ」とようやく目的の言葉が返ってきました。なんとも面倒なアプリですが、こうやって遊ぶみたいです。

 ところで、自己紹介って難しいですよね。一発で自分の名前を覚えてもらう。印象に残すための工夫が必要です。私の場合、ホワイトボードに「小杉治・太宰治・手塚治虫」と書いて国を治める仲間を紹介します。次に「今でしょの林修先生」を追加し学問を修める仲間を紹介します。最後に「俳優の向井理」を追加しレアな仲間を紹介します。全体的に人物が古く、最近の子供たちには「それ誰?」と言われる始末。昔は西武ライオンズの東尾修や作家の宗田理でも通用したのに。そもそも人物名が渋滞していて、自己紹介としては誰を紹介したいのか焦点が絞れていません。

 今まで数多く聞いてきた自己紹介の中で秀逸だったのが竹葉直(たけばすなお)先生によるものです。私が中学2年生の時の担任の先生です。先生は黒板に自分の名前を書くと「たけば・すなおです。反対から読むと、おなす・ばけたです。」と自己紹介をしました。「お茄子化けた」一発で覚えました。先生にとっては鉄板のネタだったのでしょうが、いまだに私の脳裏に焼き付いています。この先これを上回る自己紹介に出会いそうもありません。「でも先生、逆再生アプリに「おなす・ばけた」と言っても「たけば・すなお」にはなりませんよ。」

 

小杉先生