教室だより179

専任講師陣によるエッセイ(毎月20日更新)

【連載第179回】

日原鍾乳洞はどえらい秘境だった

 三月のとある日曜日に東京の奥多摩にある日原(にっぱら)鍾乳洞へ行ってきました。場所はJR青梅線の終点奥多摩駅からバスで行けるところです。お彼岸の最終日で高速道路はどこも混んでいそうなので奥多摩を目的地にしました。つづれ織りの道をしばらく進むと砕石現場を車窓から見ることができこの辺りが石灰岩でできていることがわかります。
 終点近くで車を止め100メートルほど上流に入場券売り場があります。大人800円を払って渓流に架かる橋を渡ると入り口となります。鍾乳洞の中は曲がりくねった坑道で慣れないうちは数回右の頭をぶつけてしまいました。内部は青や紫の証明で照らされており、急なところは手すりのついた金属製の階段で下っていきます。水琴窟や三途の川などお化け屋敷さながらの名前のついたところをめぐっていきます。しばらく行くと広いコンサートホールのようなところに出てゆっくり下っていきます。このあたりは子供連れの家族の元気な声がこだましています。
 帰り道になったかと思ったとき新道の矢印を見つけたどっていくことにしました。新洞の奥に進むと、「金剛杖」と名付けられた約2メートル50センチもの見事な石筍が登場! 新洞には、こうした石筍やつららのように垂れた鍾乳石などが残されており、自然の神秘に感動します。ここから先が本当の苦難で階段がいくつも連なりで数十メートル上った後同じくらい下ってやっと着いたのが出口でした。この辺りでは子供たちの声は聞こえず自上級者向けのコースだったようです。
 時間にして数十分の道のりでしたが探検気分を味わえました。足腰に自信のない人にはきついかと思いますが東京都民なら一度は訪れて損はないところです。鍾乳洞の中は初春にしてはうすら寒く平均気温は11度ということですので夏はもっとひんやりすることでしょう。混雑時は駐車場が少ないので苦労するかもしれません。

地学と化学のための参考
 鍾乳洞を胚胎する石灰岩の地層はサンゴ礁などが発達する暖かい海で、石灰質の殻や骨格をもった生物の遺骸などが海底に厚く堆積することによってできたものである。一般の岩石と異なり、主成分が炭酸カルシウムからなる石灰岩は、酸性の溶液に溶解する化学的性質をもつ。石灰岩が地殻変動によって地上に隆起すると、二酸化炭素を含む弱酸性の雨水や地下水による侵食(溶食)が始まる。
 このような侵食(溶食)によって石灰岩体の内部に多くの空洞(洞窟)が生じる。石灰岩中の微細な割れ目等を満たした地下水(炭酸カルシウムが多量に溶解している)が洞窟内に滲出すると、二酸化炭素を含む水と炭酸カルシウムとの化学反応が可逆的であることから、逆に炭酸カルシウムが方解石として晶出を始め、沈積して鍾乳石等の洞窟生成物が発達する。
 こうして洞窟内が装飾されるようになった洞窟を鍾乳洞という。

藤田先生