高橋先生の部屋(バックナンバー2)
俳句日日録 その二 (2023年6月2日)
プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ 石田波郷
「なつはよる」。 前回に続いて夜の俳句を選びました。この作品の作者・石田波郷(いしだ・はきょう)(1913~1969年)といえば、
バスを待ち大路の春をうたがはず
という作品が、中学生の教科書に取り上げられています。俳句の面白みはいろいろありますが、中でも最短のポエジーとでもいうのでしょうか、何とも言い難い俳句らしい詩情を最も強く感じさせる俳人の一人だと思います。例えば、
泉への道後れゆく安けさよ
寒卵薔薇色させる朝ありぬ
蚊を搏って頬やはらかく癒えしかな
「やはらかく」ありふれた言葉の組み合わせによりながら、作品としての高い完成度を実現しているところが、波郷の天才だと思っています。
さて、さわやかな初夏は私の一番好きな季節。この時期に詠んだ俳句を上げてみます。
立夏五句
鯉のぼり田舎の父の若き頃
輪をぬけててんとう虫としゃがみいる
朝風の若芽も赤く百日紅
椋鳥と燕あらそう庭の空
紫陽花の幼花群れ生う虹の家
次回は立秋の頃にアップしたいと思っています。